nul@gim

中国での生活

中国人は時間にルーズ

中国の人は時間にルーズだ、という話をよく耳にする。 それは酒場の薄暗い隅っこで、誰かが吐き出した何の実感も伴わない偏見のようでもあり、あるいは効率だけを追い求める現代人が作り上げた、歪な定義のようにも聞こえる。 だが、僕が北京師範大学、通称...
Uncategorized

そのころの北京駅

北京駅の広大な広場の隅っこで、ぼんやりと空を眺めていた。留学生活という、実体の掴めない時間がいよいよ終わりを告げようとしている。僕は、友人の林君を連れて旅に出ることにした。旅の目的地やその中身については、また後でゆっくりと話すことにする。今...
Uncategorized

ホームシックの涙

北京の空は、夕暮れ時になると、吸い殻を押し付けた後のような、ひどく曖昧で寂しい色に染まる。留学生活を送っていた寮では、生き物を飼うことは厳禁とされていた。けれど、僕たちの部屋には「ポチ」と名付けられた一羽のウサギが居座っていた。食用として売...
Uncategorized

大陸の煙、埃の洗礼―― 異邦人ひとりごと

大陸の煙、埃の洗礼 ―― 異邦人ひとりごと海外――といっても中国での話だが、あそこで経験した「どうしても納得がいかないこと」について、少しばかり独白(ひとりごと)を並べてみたい。まず断っておくが、今の私は煙草を嗜まない。禁煙を誓ってからとい...
中国での生活

灰皿と回鍋肉、面子と沈黙

言いそびれていたが、その晩、私は一人の女性と食事をしていた。彼女は二人目の家庭教師で、食卓を囲む間、驚くほどに箸を動かさない。その静謐な食べっぷりは、ある種の宗教的な儀式を見ているようで、私は器に残る回鍋肉の照りをただ眺めることしかできなか...
Uncategorized

鉄棒と銀色の日曜日

その日は、朝からひどく平坦な空の色をしていた。 ハローワークへ行く。ただそれだけのことなのだけれど、親会社から「人手不足だから顔を繋いでおきなさい」という、どこか他人事のような、でも逆らうことのできない助言があって、私は重い腰を上げた。仲良...
Uncategorized

パラダイムシフト

ニューヨーク、タートル・ベイ。 国際連合本部の巨大な石造りの器の中に、私はいた。 九月の湿った風がハドソン川から吹き寄せ、重い扉を抜けて、私の繊細な皮膚を撫でる。新卒という、まだ何の色にも染まっていないはずの自分の立場が、この巨大な空洞の中...
Uncategorized

耽溺

街は、巨大な消化装置だった。新宿歌舞伎町。そこでは、多国籍な言語とネオンの光が混ざり合い、胃液のような熱気となって通行人の皮膚をじりじりと焼いている。二十四歳のミツオが握るタクシーのハンドルは、もはや車体の一部というよりは、彼自身の肉体から...
Uncategorized

土曜日のお楽しみ

その日は土曜日。 熱を孕(はら)んだ風が、工場の錆びたトタンをなでていく。 人という生き物には、どうしようもなく「卑しい」部分がある。そう言ってしまうと身も蓋もないが、私の心の奥底に、ふと濁った澱(おり)のようなものが沈殿しているのを感じる...
Uncategorized

そりゃあ、ブレーキは必要

結局のところ、ブレーキのついていない自転車というものは、どう取り繕ってみたところで、やはり危ないものに決まっているのである。これは論理の問題というよりは、むしろ私の内面における生存への執着、あるいは「まともな社会生活を営んでいる」という自己...