昔、辰吉の最後の試合だったと思う。リングサイドに座った奥さんは子どもを抱き、試合に背を向けていた。試合を見るように友達に促されても視線を落とし続けた姿が印象に残っている。
ジェンダーギャップだとか言って何でもかんでも男女平等を主張するが、女性は弱い存在だ。すべてが男性よりも弱い存在であり、だからこそ優遇されることも多々ある。飲食すれば女性は割引されるし、女性専用車両もある。それは社会の優しさからくる恩恵であり、当然の権利だと思わないでほしい。
女性が土俵に上がってはいけないこと。これは女性に対する差別ではない。むしろ女性が土俵に上がることは女性に対する背信行為になる。格闘家には影で支える女性がいる。妻であり、恋人であり、母親である。そうした女性たちへの配慮のために、女性が土俵に上がってはいけないという仕来りがあるのだと思う。
若島津親方の高田みづえさんを前にして、部外者の女性が活動家だからといって土俵に上がれるだろうか。上がったらその神経を疑う。
女は力士に聞くだろう。
「ねえ、どうして女は土俵に上がっちゃいけないの? 差別じゃない?」
「うるせえ、女は不浄で汚いからだ。土俵は神聖な場所だから、上がるんじゃねえ」
「そんなの差別じゃないの!」
こんなやり取りが昔から続き、その都度、大切な女性を守るために男は悪役を演じ、引っかかれたり殴られたり蹴られたりしながら、理解のない女性からの攻撃を沈黙で受け入れてきた。
男はつらい。しかし、この暗黙の約束である仕来りは守り抜かなければならない。


コメント
flet.ai – The Ultimate AI Tools!