中国での生活

ストーリー

【小説】黒いまりも

あの、ぬるい湿気を孕んだ一九九八年の北京の路線バスの車内で、僕の網膜に焼き付いたあの黒いマリモのような腋の毛の塊と、僕の鼻腔を確かにあの日、そしてそれ以降もずっと支配し続けているベビーパウダーのような、あるいはニベアの青い缶の蓋を開けたとき...
中国での生活

大根細工と全裸爆走おじいさん。中国・延辺で聞いた「高麗人参」のヤバすぎる効能

林君の家族は、見ず知らずの異国の地からやってきた私を、本当に温かく親切にもてなしてくれた。聞けば、お母さんは少し病弱なため、普段は外に出て仕事をすることが難しいらしい。その代わりと言ってはなんだが、大黒柱であるお父さんには、極めてユニークで...
中国での生活

生きた心地がしない!ノーマルタイヤ爆走タクシー。辿り着いたのはレンガ造りの温かい家だった

空港を出て、私たちは林君の自宅へ向かうためにタクシーへと乗り込んだ。 この地域を走るタクシーの多くは「長安鈴木(チャンアン・スズキ)」の車だった。形状から見て、おそらく日本でお馴染みの軽自動車「アルト」の中国仕様か、その亜種にあたるモデルだ...
ストーリー

カルーセル麻紀への妄想とマイナス25度。中国・ロシア・北朝鮮の国境を目指して

実は、私はかつて韓国語を熱心に勉強していた時期がある。今から本腰を入れて学び直せば、ある程度まではすぐに勘を取り戻せるだろう。とはいえ、当時の自分がどれほど喋れたかと言えば、「日常会話には事欠かないレベルでした」と胸を張りたいところだが、正...
中国での生活

30年前の写真で定期券更新!?中国の街角で知った「物持ちが良い」という本当の意味

北京の街が、まだ自転車の鈴の音と、どこか煤けたような空気の匂いに包まれていた頃のお話です。 金(ジン)さんという方がいました。金さんには可愛らしい娘さんがいて、彼女はよく、私の通う北京師範大学まで遊びに来てくれたものです。金さんの一家は、街...
中国での生活

中国の餃子屋で『プラスチックの燃え殻』みたいな雑草を愛せるようになった話

――中国の大衆餃子屋で知った、身体と食の不思議な関係――身体が求める「医食同源」の真実人間という生き物は、放っておけば自分の好きなものばかりを食べてしまう。しかし、本能の赴くままに偏った食生活を続けていれば、いずれ確実に健康を害してしまうの...
中国での生活

体感温度って大切

意を決して空港の自動ドアをくぐり、玄関を一歩出ると、そこには凄まじい熱気の群衆が押し寄せていた。みんなが競い合うようにして、名前の書かれた小さなプラカードを必死に掲げている。 出迎えの人間が客よりも多いのではないかと思わせるこの圧倒的なエネ...
中国での生活

中国の国語

私の中国語は、かつて北京にある大学の付属機関でみっちりと学んだ、いわば「お墨付き」の標準中国語(普通話)である。ネイティブの講師陣から発音の基礎を叩き込まれ、文法も体系的に習得した。そのため、現地でもそれなりに通用するだろうという自負がどこ...
中国での生活

燕京―麦酒と小姐の物語―

北京の街を歩けば、どこからともなく飛来する乾いた砂が、視界を薄く煙らせている。二十世紀がその重い扉を閉じようとし、新たな世紀の足音が微かに、しかし確かな響きを伴って近づいていたあの頃。私は、昼下がりの気怠い陽光に背を押されるようにして、いつ...
中国での生活

中国人は時間にルーズ

中国の人は時間にルーズだ、という話をよく耳にする。 それは酒場の薄暗い隅っこで、誰かが吐き出した何の実感も伴わない偏見のようでもあり、あるいは効率だけを追い求める現代人が作り上げた、歪な定義のようにも聞こえる。 だが、僕が北京師範大学、通称...