戦後、日本が復興から高度経済成長へと向かう中、猛烈に働くサラリーマンの姿を、彼ららしい「過剰なスピード」と「ナンセンスなドタバタ」で笑い飛ばしていただきます。海吉さんの喉がちぎれんばかりのツッコミと、山吉さんの「あー、いそがし!」の合唱です。
漫才:猛烈サラリーマン
山吉: (舞台を全力疾走で横切りながら)あー、いそがし、いそがし! あー、いそがし!
海吉: ちょっと待ち正(な)さい! 舞台はトラックじゃないんだよ。何なんだ、その格好は。
山吉: 見て分かりませんか。私は今、日本を背負って立つ「猛烈サラリーマン」ですよ!
海吉: サラリーマンか。それにしては、ネクタイが三本も巻いてあるぞ。
山吉: 当たり前ですよ。一本は会社用、一本は接待用、もう一本は「自分がどこへ行くか忘れないため」の命綱です!
海吉: 迷子になるくらい働いてるのか。
山吉: そうですよ。今のサラリーマンは、一分一秒が勝負です。私なんかね、朝起きてから会社に着くまで、全部「逆立ち」で行きます。
海吉: なんで逆立ちなんだよ。
山吉: 靴の底が減らないでしょ! 節約ですよ。その分、頭の回転が速くなって、会社に着く頃には知恵熱で頭からコーヒーが沸いてます。
海吉: 便利な体だな! 会社で仕事しなさいよ。
山吉: 仕事も早いですよ。私は電話を三台同時に耳に当てます。
海吉: 耳は二つしかないだろ。
山吉: 足の指で受話器を挟むんです。左耳で「課長、承知しました」、右耳で「取引先、まかりならん」、足の指で「母ちゃん、今夜はカレーにしてくれ」って。
海吉: 公私の混同が激しいんだよ!
山吉: そしたらね、あまりに忙しくて、自分の声が自分に追いつかない。
海吉: どういうことだ。
山吉: 私が「もしもし」って言った五分後に、背中の後ろから「もしもし」って自分の声が聞こえてくるんです。
海吉: 声が時差を起こしてるのか。
山吉: 自分の声に自分で返事してたら、課長に「お前は一人で二部合唱してるのか」って怒られました。
海吉: 当たり前だ! 仕事に集中しろ。
山吉: だから私、究極のサラリーマン・スタイルを開発しました。「全自動・ハンコ押しマシーン」!
海吉: またマシーンか。
山吉: おでこにハンコを百個植え付けましてね。書類が来たら、頭を机に「ガンガンガン!」って打ちつけるんです。
海吉: 痛いよ! 脳震盪起こすだろ。
山吉: 気がついたら、書類だけじゃなくて、課長の背中や通りすがりの猫にまで「承認」のハンコを押しちゃって。
海吉: 迷惑な判子(はんこ)野郎だな!
山吉: 最終的には、自分のお尻に「定時退社」の判子を押して、ロケットみたいに飛んで帰りました。
海吉: どこへ飛んでいくんだよ!
山吉: 飛んでる途中で空気が薄くなって、やっぱり息苦しい!
海吉: (突き飛ばして)もういいよ! 辞めてしまえ!
二人: (声を揃えて)あー、いそがし、いそがし!
サラリーマンの悲哀を爆発させる: ネクタイ三本、逆立ち出勤、おでこでハンコ……。当時のサラリーマンが感じていた「忙しさ」のプレッシャーを、山吉さんが物理的な異常行動に変換して暴走します。
言葉の応酬: 山吉さんの「一人二部合唱」というフレーズなど、音の響きとイメージの飛躍を大切にしました。
スピード感: 常に「動」を感じさせる台詞回しにすることで、読みながらでも舞台を駆け回る二人の姿が浮かぶように構成しています。
「猛烈」に働いた後の、どこかスカッとするような、でもやっぱりバカバカしい笑い。山吉・海吉さんの真骨頂をお楽しみいただけましたでしょうか。

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