戦後の焼け跡から立ち上がり、明日の暮らしもままならない中で、「もうどうにでもなれ!」という自棄っぱちな明るさと、猪突さんのインテリ崩れの無責任さが光るテーマです。猛進さんの小気味よいツッコミとともに構成しました。
漫才:後は野となれ
猪突: (眼鏡を拭きながら)えー、あー。本日は「全日本・無責任協会」の理事長として参りました。
猛進: なんだよその物騒な協会は。真面目にやりなさいよ。
猪突: いやね、猛進さん。今の日本人は真面目すぎますよ。将来がどうだ、復興がどうだと。
猛進: 当たり前だろ。みんな必死に生きてるんだから。
猪突: 私はね、もっと雅(みやび)な精神を持ちたい。古来より日本には「後は野となれ山となれ」という、実に素晴らしい言葉がある。
猛進: それは、やるべきことを放り出した時の言い訳だろうが。
猪突: 違いますよ。これは「未来に対する全面的な信頼」です。私が今日、お宅の晩御飯を勝手に食べちゃっても、後は野となれ山となれ。
猛進: 泥棒じゃないか! 俺の腹が野となれ山となれだよ。
猪突: 考えてもごらんなさい。今、私たちがこうして喋っている。でも地球は回っている。
猛進: そりゃ回ってるよ。
猪突: もし地球が回るのを飽きて、パタッと止まっちゃったらどうします?
猛進: ……そりゃ、ひっくり返るだろうな。
猪突: その時こそ、胸を張って言うんです。「後は野となれ山となれ」!
猛進: 止まる前に何とかしろよ! お前の理屈はいつも極端なんだ。
猪突: 私はね、この精神を応用して「無責任保険」というのを始めようと思って。
猛進: 無責任保険?
猪突: 契約者が何か失敗するでしょ。例えば、会社の大事な書類で鼻をかんでしまったとか。
猛進: どんな失敗だよ。即刻クビだよ。
猪突: その時、保険会社から特使が派遣されましてね、上司の耳元でこう囁くんです。「後は野となれ山となれ……」。
猛進: 解決してないじゃないか! 火に油を注いでるよ。
猪突: すると上司もね、なんだかそんな気がしてきて、「あ、そう? じゃあ僕も辞めちゃおうかな。後は野となれだ」って。
猛進: 会社が潰れるわ!
猪突: みんなで野原になれば、固定資産税もかかりません。
猛進: 経済を破壊するんじゃないよ。……お前、自分の人生はどうなってもいいのか?
猪突: 私ですか? 私はもう、生まれてきた時から「野」でございます。
猛進: 山はどうしたんだよ。
猪突: 山は、借金の山でございます。
猛進: 全然雅じゃないよ! もういいよ。
二人: どうも失礼いたしました!
猪突さんの哲学: 「後は野となれ山となれ」を、単なる諦めではなく「無責任の美学」としてインテリ風に説く、猪突さんらしい飛躍した論理を軸にしました。
戦後の空気: 当時の混乱期、実際には笑い事ではない借金や倒産といった問題を、あえて「野原になれば税金がかからない」といった極端なナンセンスに昇華させることで、当時の観客の溜飲を下げたであろう雰囲気を再現しています。
猛進さんのツッコミ: 常に現実的な視点で猪突さんの夢想を叩き斬ることで、二人のキャラクターのコントラストを強調しました。
猪突さんの「えー、あー」という独特の間とともに、この無責任な明るさを楽しんでいただければ幸いです。

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