伊藤: どうもー、オニギリマンです。お願いします。いやー、世の中ね、「親孝行」って大事ですよ。
富山: ……ちょっと何言ってるか分からない。
伊藤: 分かんだろ! 親を大事にするってことだよ。温泉旅行に連れていくとか、美味しいもの食べさせるとかさ。
富山: ああ、それなら俺も昨日、究極の親孝行してきたよ。
伊藤: おお、いいじゃねえか。何したんだよ?
富山: 親父を「消した」。
伊藤: ……。……なんて?
富山: だから、親父をこの世からデリートしたんだよ。お袋と一緒に協力してな。
伊藤: お前、それ「親孝行」じゃなくて「殺人」だよ! 何言っちゃってんだよ! 漫才の冒頭でとんでもない告白すんなよ。
富山: いや、でもお袋は泣いて喜んでたぞ。「これでやっと静かに眠れるね」って。二人で肩組んで安堵したもん。
伊藤: 怖えよ! 安堵の質が違うんだよ。何があったんだよ一体。
富山: いや、うちの親父、ひどかったんだよ。朝から晩まで酒飲んで、仕事もしないで。
伊藤: まあ、そういうダメな親父さんも中にはいるけどさ。
富山: 飲むと荒れるんだ。お袋を立たせて、一晩中説教。挙句の果てには手が出る。「お前が俺をダメにしたんだ」って言いながら、お袋の顔を殴るんだ。
伊藤: ……それは笑えねえな。
富山: だろ? 昨日もそうだった。親父がまたベロベロに酔っ払って帰ってきて、お袋の髪の毛を掴んで引きずり回してんだよ。「酒が足りねえんだよ、金出せ!」って。
伊藤: 最悪じゃねえか。
富山: その時、俺とお袋の目が合ったんだ。言葉は交わしてないけど、お互いの脳内に同じ文字が浮かんだね。
伊藤: 何が浮かんだんだよ。
富山: 「【実行】」。
伊藤: パソコンのエンターキーみたいに言うな!
富山: 俺はキッチンから一番太い紐を持ってきて、親父の背後からスッと近づいた。親父はまだお袋に怒鳴ってる。「俺の人生を返せ!」って。だから俺は耳元で囁いてやったんだ。
伊藤: なんて言ったんだよ。
富山: 「地獄で返してもらいな」って。
伊藤: ハードボイルドすぎるだろ! 映画のワンシーンか!
富山: グッと締めたら、意外とすぐだったな。親父、酒のせいで体がボロボロだったから。
伊藤: 生々しいんだよ。で、どうしたんだよその後。
富山: お袋と二人で、親父を抱えて庭の隅っこまで運んだんだ。そしたらお袋が「あんた、お疲れ様。これ、親父さんの大好物だったわね」って言って、親父の口にワンカップの酒を注ごうとしたんだ。
伊藤: 死んでるんだろ?
富山: お袋が言うには、「死出の旅路のガソリン」らしい。
伊藤: お袋さんも相当きてるな! 精神状態大丈夫かよ。
富山: 二人で穴を掘って、親父を埋めた。土をかけ終わった時、お袋が言ったんだ。「これでやっと、明日の朝、怯えながら起きなくて済むわね。最高のプレゼントをありがとう」って。
伊藤: ……。
富山: 俺、感動しちゃってさ。お袋の肩を抱いて、「これからは二人で幸せになろうな」って言ったんだ。まさに親孝行だろ。
伊藤: ……いや、理屈は分からなくもないけどさ。でもそれ、捕まるぞ? 警察来るぞ。
富山: 大丈夫だ。俺、庭に「観葉植物」って書いた立て札立てといたから。
伊藤: バレるわ! どんな巨大な観葉植物だよ! 警察が来て「これ何ですか?」って聞かれたらどうすんだよ。
富山: 「あ、これ新種の『オヤジソウ』です。夜中に暴れる習性があるんで、深めに植えてあります」って答える。
伊藤: 通らねえよ! 鑑識がすぐ掘り返すわ。
富山: でもさ、伊藤。お前、想像してみろよ。自分の母親が毎日殴られて、ボロボロになってる姿を。
伊藤: そりゃ、辛いよ。なんとかして助けたいとは思うよ。
富山: だったら、物理的に排除するのが一番確実だろ? お袋の笑顔、10年ぶりに見たぞ。あんなに澄んだ目、見たことなかった。
伊藤: 笑顔の種類が「解放」すぎるんだよ。でもな、他にも方法あっただろ。警察呼ぶとか、シェルター入るとか。
富山: 親父、警察呼んでもすぐ出てくるんだよ。で、戻ってきたらもっと酷くなる。「お前ら、警察に売りやがったな!」って。だからもう、選択肢は一つしかなかったんだ。
伊藤: ……。
富山: これを「親不幸」って言う奴がいたら、俺がそいつを消すだけだ。
伊藤: 怖いよ! お前、殺しのスパイラルに入ってるじゃねえか。
富山: でも、埋めた後に二人で食べたカップラーメン、今までで一番美味かったなぁ。
伊藤: 飯テロか! ここでさっきの話に繋がるのかよ。
富山: お袋が「お父さんがいなくなって、お湯の音がよく聞こえるわね」って微笑みながら麺をすすってんの。平和だなぁと思ったね。
伊藤: お湯の音がよく聞こえる……。切なすぎるだろ、その平和。
富山: 伊藤、お前も親孝行したいんだろ? 手伝うぞ。
伊藤: 何をだよ! 俺の親父は元気に公務員やってんだよ! 誰も殴ってねえし、晩酌もビール1缶で満足してんだよ。
富山: じゃあ、俺が「暴れる親父」の役をやってやるから、お前がお袋と一緒に俺を消せばいい。
伊藤: なんでそんな変な練習しなきゃいけないんだよ! 練習いらねえよ。
富山: (親父の真似で)「おい! 金出せ! 誰のおかげで飯食えてると思ってんだ!」
伊藤: やめろよ、似てるから。
富山: (お袋の真似で)「たけし、今よ! あの紐を持ってきて!」
伊藤: お袋、決断早すぎんだろ! 普段から用意してたろその紐。
富山: さあ、伊藤。親孝行のチャンスだ。グッとやれ。
伊藤: やらねえよ! 漫才中に相方を絞め殺す奴がいるか!
富山: ……ちっ。
伊藤: 舌打ちすんな!
富山: まあ、冗談はさておき。親孝行の形は人それぞれってことだよ。
伊藤: 極端すぎるんだよ。法律の範囲内でやれ。
富山: じゃあ、次は「お袋を宇宙旅行に連れていく」っていう親孝行を計画するよ。
伊藤: おお、いいじゃねえか。それなら健全だ。
富山: 燃料は、親父の遺体を……。
伊藤: 使うな! 遺体を再利用すんな! どんなバイオ燃料だよ!
富山: ちょっと何言ってるか分からない。
伊藤: もういいぜ。
富山・伊藤: どうもありがとうございました。
≪親孝行≫
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