なぜ私たちは午前三時にポテチを開けてしまうのか
深夜の静寂を切り裂くように、自動ドアが「ピンポーン」と無機質な音を立てる。
オフィス街の片隅に佇む、二十四時間営業のコンビニエンスストア『スマイルマート』。ここは、昼間の太陽の下では決して姿を現さない「空腹」たちが、ひっそりと集う聖域だ。
私はレジカウンターの奥で、マニュアル通りの角度で頭を下げる。私の体は、この店舗という巨大な有機体の一部の細胞として、完璧に機能している。制服のポリエステルが肌を擦る感覚が、私に「正常な人間」としての輪郭を与えてくれる。
「いらっしゃいませ。温めますか?」
目の前に立っているのは、泥のように疲弊したスーツ姿の男だ。彼はカゴの中に、揚げ鶏、カルボナーラ、そして「深夜限定・背脂にんにくマシマシ油そば」を詰め込んでいる。
彼の目は、飢えた獣のそれではない。もっと根源的な、自分の欠損を何かで埋めようとする、執着に近い渇望。
「あ、はい。全部温めてください」
男の声はかすれている。私は彼を「腹ペコ」と定義する。
この時間帯に店を訪れる人々は、誰もが「普通」の食事を求めていない。彼らが求めているのは、摂取することで自分の中のドロドロとした違和感を塗りつぶすための、高カロリーな「燃料」だ。
電子レンジが唸りを上げる。重低音が店内に響く中、私は男の背後にある雑誌コーナーを見つめる。そこには、健康的な食事や丁寧な暮らしを説くキラキラした表紙が並んでいるが、この深夜二時の空間では、それらは異端の宗教書のように不気味に見える。
「お待たせいたしました。大変熱くなっておりますので、お気をつけください」
男はビニール袋をひったくるように受け取ると、店の外に設置された小さなベンチに座り込んだ。彼は家まで待ちきれないのだ。暗闇の中で、プラスチックの容器を乱暴に開ける音が聞こえる。
私はふと思う。
彼が食べているのは、果たして「食べ物」なのだろうか。
もしかしたら、彼は自分自身の孤独を咀嚼しているのではないか。あるいは、社会から要求される「まともな社会人」という役割を演じるために削り取られた、自分自身の肉を補充しているのではないか。
次に入ってきたのは、若い女だった。

彼女は驚くほど細い指で、店内の棚にあるスナック菓子を次から次へとカゴに放り込んでいく。ポテトチップス、チョコレート、グミ。彩り豊かなパッケージが、彼女の青白い顔を不自然に照らす。
彼女の「腹ペコ」は、もっと空虚だ。
それは胃袋の空腹ではなく、世界の成り立ちに対する違和感からくる、埋めようのない穴。
彼女はレジで会計を済ませると、出口のすぐ横で、一袋目のチョコレートを開けた。銀紙を剥がす音が、静かな店内に「ピリリ」と響く。彼女はそれを口に運ぶとき、恍惚とした表情を浮かべるわけではない。ただ、義務を遂行するように、無表情に顎を動かしている。
その光景を見ていると、私の喉の奥も、きゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。
私もかつては、彼らと同じだった。
「普通」の食べ物が砂の味にしか感じられず、深夜のコンビニの、あの人工的な光に救いを求めていた。添加物の塊のような、暴力的なまでの味付けだけが、自分が生きていることを実感させてくれた。
しかし、今の私は違う。
私はこの店の店員だ。聖域を守る神官であり、あるいは家畜に餌を供する飼育員だ。
時計の針が三時を回る。
店内の空気はますます濃密になり、棚に並んだおにぎりやパンたちが、意志を持っているかのように呼吸を始める。
「いらっしゃいませ」
今度は、作業着を着た大柄な男だ。
彼は一言も発さず、ホットスナックのケースを指差す。
「Lチキ、全部」
全部? 私は一瞬、耳を疑う。ケースの中には、五つのチキンが並んでいる。
「……五点、すべてでよろしいでしょうか?」
「ああ。全部だ」
男はそれを受け取ると、袋の中から一つを取り出し、歩きながらかぶりついた。肉汁が彼の口元を汚すが、彼はそれを拭おうともしない。
彼は「食べる」という行為を通じて、この世界そのものを食らおうとしている。この薄暗い街、不条理な仕事、ままならない人間関係。すべてを咀嚼し、胃酸で溶かして、排泄物に変えてしまいたいのだ。
店の外では、先ほどのスーツの男が、空になった「油そば」の容器を虚ろな目で見つめている。
若い女は、四袋目のお菓子に手をつけている。
彼らは皆、夜という時間を使って、自分自身を再構築している。
昼間、社会に適合するために殺した自分の一部を、この不健康で、過剰で、愛おしい「食」によって、無理やり再生させているのだ。
私は、レジ横の鏡に映る自分を見る。
制服を着た、完璧な店員の顔。
だが、その内側では、私もまた、ひどく「腹ペコ」だった。
私はマニュアルにない動作で、廃棄処分になる予定の、少し形が崩れたおにぎりを手に取る。
防犯カメラの死角に入り、私はそれを一口かじる。
冷えた米の感触。保存料の微かな苦味。
それが私の血肉となり、明日の私を形作る。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
私は誰に向けてでもなく、そう呟く。
自動ドアが開く。
夜の風が店内に流れ込み、人工的な沈黙をかき乱す。
ここは『スマイルマート』。
腹を空かせた迷子たちが、束の間の「人間」を取り戻すための、夜間営業の胃袋だ。
私は再び、レジカウンターの中という定位置に戻る。
次の「空腹」がやってくるのを、完璧な微笑みを携えて待ちながら。

コメント