≪飯テロ≫

ストーリー

伊藤: どうもー、オニギリマンです。お願いします。いやー、最近ネットでよく見かけるじゃないですか。「飯テロ」って言葉。
富山: ……ちょっと何言ってるか分からない。
伊藤: 分かんだろ! 有名な言葉だよ。夜中においしそうな食べ物の画像をアップして、見た人の食欲を刺激して苦しめるっていうね。
富山: ああ、それなら俺も被害者だよ。昨日も夜中の2時に、誰かがアップした「脂ぎったカツカレー」の写真のせいで、気がついたらキッチンで素パスタ食ってたもん。
伊藤: 惨めだな! パスタに何かかけろよ! でもさ、俺たちみたいなデカい人間にとって、飯テロっていうのは日常茶飯事なわけですよ。今日はね、俺が最強の「飯テロ」を仕掛けるから、お前はそれに耐えられるかやってみてほしいんだ。
富山: いいよ。受けて立つよ。
伊藤: じゃあ行くぞ。……時刻は深夜1時半。お前はちょっと小腹が空いて、なんとなくスマホを眺めてる。そこに流れてきたのが、この一枚の写真だ。


富山: ほう。
伊藤: 「ど真ん中に、テリッテリの黄身が乗った『スタミナ豚丼』」だ。
富山: ……(ゴクリ)
伊藤: 豚肉は厚切りで、甘辛い醤油ダレがこれでもかってくらい絡んでる。端っこのほうがちょっと焦げてて、香ばしい匂いが画面から突き抜けてきそうだ。そこに箸をスッと入れる。すると、パンパンに張った黄身がトロ〜ッと溢れ出して、肉の隙間を縫って、下の白米に染み込んでいくんだ……。
富山: ……ちょっと待て。その米は、硬めか?
伊藤: もちろんだ。タレを吸ってもベチャつかない、絶妙な炊き加減のコシヒカリだ。
富山: ……。……よし、冷蔵庫開けてくる。
伊藤: 早いよ! まだ始まって30秒だぞ。我慢しろよ。
富山: いや、今の黄身が流れる描写で、俺の胃袋が「緊急事態宣言」出したんだわ。
伊藤: まだまだ。ここからが本番だよ。その豚丼の横に、添えられてるのは何だと思う?
富山: 紅生姜だろ。
伊藤: 甘いな。「揚げたての唐揚げ」だよ。2個。
富山: 殺す気か! 豚丼に唐揚げは、もう重火器だろ。飯テロじゃなくて飯大虐殺だよ。
伊藤: しかもその唐揚げ、衣が片栗粉多めの「竜田揚げ風」でな。噛んだ瞬間に「ザクッ!!」って音が部屋中に響く。中からは鶏の脂が小籠包みたいに溢れ出してくるんだ。
富山: ……(空を仰ぐ)……あぁ、見える。茶色い宝石箱が見える。
伊藤: だろ? で、口の中が脂でいっぱいになったところに、冷え冷えの「瓶のコーラ」を流し込む。グラスじゃないぞ、瓶だ。喉に刺さるような強炭酸。ゲップを我慢しながら、また肉を食らう……。
富山: ……おい、伊藤。
伊藤: なんだよ。

富山: お前、これ自分の経験談だろ。昨日食ったやつだろ。
伊藤: バレたか。カロリーゼロ理論で言えば、夜中に見る写真はカロリーがないから太らないんだけど、実際に食うとちょっとだけカロリーあるんだよな。
富山: 「ちょっと」じゃねえよ! 全部あるよ!
伊藤: まあ待て。飯テロは肉だけじゃない。冬の寒い夜、こたつに入ってる時、テレビから流れてくるのは何だ?
富山: 演歌か?
伊藤: なんでだよ。「おでん」だよ。
富山: ああ……いいな。
伊藤: コンビニのレジ横にあるような、出汁が真っ黒になるまで煮込まれたやつな。まずは「大根」だ。箸を当てるだけで、抵抗なくスッと二つに割れる。芯まで出汁が染み込んでて、色はもう茶色を通り越して琥珀色だ。
富山: 大根はいいな。実質、水だからな。
伊藤: 水じゃねえよ。で、そこに「カラシ」をたっぷりつけるんだ。鼻にツーンとくるのを我慢しながら、ハフハフ言って口に運ぶ。熱々の出汁がジュワ〜ッて広がって……。
富山: ……で、その後に「餅巾着」だろ?
伊藤: 分かってるねぇ! 油揚げの中から、トロットロになった餅が顔を出す。出汁を吸った餅は、もう飲み物だ。噛まなくていい。
富山: 餅は飲み物……。確かに、喉越しがいいもんな。
伊藤: よくないよ! ちゃんと噛めよ! 詰まらせるぞ。
富山: でもさ、飯テロって結局「麺類」が最強じゃないか?
伊藤: お、分かってきたな。じゃあ富山さん、究極の麺テロをお願いしますよ。
富山: ……じゃあ行くぞ。雨の降る、少し肌寒い夜だ。お前は仕事帰りで、腹が減りすぎて背中と腹がくっつきそうだ。
伊藤: 実際にはくっつかないけどな。脂肪が邪魔して。
富山: 黙って聞け。ふと立ち寄った深夜営業のラーメン屋。暖簾をくぐると、店中が「獣の匂い」で満たされている。
伊藤: 獣……豚骨か!
富山: そうだ。注文したのは「全部乗せ特製家系ラーメン」
伊藤: 最高じゃねえか。
富山: 運ばれてきた丼の表面には、厚さ5ミリのラードの層が浮いている。スープはもはや液体というより「泥」に近い。
伊藤: 褒め言葉だな、それは。
富山: 麺を持ち上げると、短い太麺にこれでもかとスープが絡みついてくる。それを勢いよく、ズズズッ!とすする。口の中に広がる強烈な醤油のキレと、豚骨の野性味……。
伊藤: くるねぇ!
富山: そこに、スープをたっぷり吸わせた「海苔」を、あえて「豆板醤を乗せた白米」に巻いて食べるんだ。
伊藤: ……!!(悶絶)
富山: 炭水化物を炭水化物で巻く。これぞ背徳の極み。さらに、卓上のおろしニンニクをスプーンで3杯ぶち込む。明日が仕事なんて関係ねえ。今、この瞬間、俺はニンニクと一体になるんだ……!
伊藤: ……お前、いい表現するなぁ。お腹空いてきたわ。
富山: だろ? これが飯テロだよ。
伊藤: でもさ、最後はやっぱり甘いもので締めたいよな。
富山: デザートか。
伊藤: 想像してごらん。「焼きたての厚切りフレンチトースト」だ。
富山: おしゃれだな。
伊藤: 卵液に丸一日浸かってて、中までプリンみたいにプルプルなんだ。それをバターを引いたフライパンでじっくり焼く。表面はカリカリのキャラメリゼ。そこに、冷たいバニラアイスをどーんと乗せる。
富山: 熱いと冷たいの暴力だな。
伊藤: アイスが熱で溶けて、ソースみたいになっていくところに、メープルシロップを滝のようにかける。もう、皿の上が「糖分のプール」だ。
富山: ……よし、行こう。
伊藤: どこへ。
富山: 今からそのフレンチトースト作ってくれる店。
伊藤: 深夜2時だよ! どこも開いてねえよ!
富山: だったら、お前が今ここで作れよ。
伊藤: 漫才中だよ! キッチンねえだろ!
富山: 気がついたら、俺の腹が「グー」って鳴ってるわ。これ、マイク拾ってないかな。
伊藤: 拾っててもいいよ、リアルで。まあ結論として、飯テロっていうのは、空腹という最高のスパイスをさらに引き立てる「芸術」なんだよ。
富山: でも、やりすぎると「健康」っていうテロに遭うからな。
伊藤: 嫌なこと言うな。明日からダイエットすればいいんだよ。
富山: お前、そのセリフ20年前から言ってるぞ。
伊藤: うるせーよ! もういいぜ。

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