男でやる奴はいなかった…

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やっぱり「女」は強い。いや、強すぎると言っても過言ではない。この工場では、女性たちがまるで天下を取ったかのように、やりたい放題。とはいえ、彼女たちは真面目に、そして黙々と仕事をこなしているので、こちらとしても文句のひとつも言えない。日本人管理職としては、ただただ苦笑いするしかないのだ。

ふと振り返ってみると、印象に残っているのは女性ばかり。ベトナムの男性陣といえば、どうにもこうにも影が薄い。いや、正確には「軟弱」と言った方がしっくりくるかもしれない。思い出そうとしても、顔が浮かんでこない。唯一、記憶に残っているのは工場長くらいだろうか。彼は仕事ができた。だからこそ、今でもはっきりと覚えている。

さて、この工場では食事の時間がちょっと変わっている。通常なら、部屋ごとに時間をずらして交代で休憩を取るのが一般的だが、ここでは全員が一斉に食事をとる。なぜか? それは生産効率のため…ではなく、防犯上の理由からだ。作業室の鍵は、各部屋の責任者が最後に施錠してから退室することになっている。部屋は見通しが良く、誰かが取り残される心配はないが、それでも徹底している。どうやら、製造している製品の中には機密性の高いものも含まれていたらしい。…いや、そんなのあったっけ?と首をかしげたくなるが。

食事の時間は、ある意味で一日のハイライト。みんな、無料の食事を囲んで「ペチャクチャ」とおしゃべりに花を咲かせる。だが、綺麗な顔をして「クチャクチャ」と音を立てて食べるのは、どうにもいただけない。確かに、音を立てて食べると美味しさが倍増するという説もあるが、幼い頃から「音を立てずに食べなさい」と厳しく躾けられてきた私にとっては、まさに地獄のような空間。最初は耳を塞ぎたくなったが、しばらくすると不思議と慣れてしまった。人間の適応力とは恐ろしいものだ。

日本には「遠慮」という美徳がある。しかし、ここベトナムでは…特に「越南女(ベトナム女性)」には、その概念が存在しないように思える。いや、存在していたとしても、日常生活ではほとんど見かけない。どうなってんの、ほんとに。

昼食はというと、おかずの量は控えめ。その代わり、ご飯は食べ放題。私はというと、見た目に反して結構な大食漢でして、おかずだけでは到底満腹にならない。そこで、ちょっと行儀が悪いとは思いつつも、ベトナム名物の魚醤(ヌクマム)を白米にかけて食べる。これがまた、クセになる美味しさ。最初は「なんだこの匂いは!」と驚いたが、今ではすっかり虜である。

さて、ここからが本題。越南女たちは、食堂に入る際、なぜかこっそりと黒いビニール袋を持参してくる。ご飯はお櫃(おひつ)に入っており、一定の間隔で並べられている。数は多くない。彼女たちは、ささっとご飯をよそい、適当な席に座って食べ始める。ここまでは普通だ。しかし、一部の越南女は違う。お櫃の中のご飯を、後の人のことなど一切考えず、黒い袋におしゃもじで豪快に放り込んでいくのだ。その手つきは、まるで罪悪感ゼロ。むしろ楽しげで、リズミカルですらある。

日本人なら、良心の呵責に苛まれてとてもできない芸当だ。しかも、その袋の膨らみ具合ときたら、どう見ても5合は軽く超えている。それも一人や二人ではない。複数人が同じようなことをしているのだ。これはもう、ちょっとした「白米の密輸」ではないかと疑いたくなるレベル。

とはいえ、ベトナムでは米が非常に安い。現在の価格で1キロあたり200円程度。10年前の話なら、150円くらいだっただろうか。そう考えると、彼女たちにとっては「米くらいケチケチすんなよ」という感覚なのかもしれない。

ベトナムは米どころ。豊かな稲作文化が根付いている。だからこそ、彼女たちにとって米は「ありがたくいただくもの」であり、「余ったら持ち帰って家族と分け合う」のが当たり前なのだろう。日本では「コンプライアンスがどうのこうの」とうるさく言われるが、私はこういうことは見逃してもいいと思っている。だって、残して腐らせるよりは、よっぽどお米の神様に感謝される行為ではないか。

文化の違いに戸惑いながらも、私は今日も食堂で、魚醤ご飯をかき込みながら、越南女たちのたくましさに感心しつつ、心の中でそっとつぶやくのだ。

「やっぱり、女は強いなあ…」

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