なかなか来てくれない人、田口(仮名)
「田口さん、じゃあ、来週から来てください」と伝えたものの、しばらくして連絡が来た。
「母が入院したので、しばらく行けません」
「そうですか、それは大変ですね。では、様子を見て来週来てください」
その週の金曜日になると、また連絡が来た。
「栃木の身内に不幸があったので行けません」
「そうですか…それはご愁傷様です。お気をつけて行ってください」
そして、次の金曜日。
「戻ってきたので、来週の月曜日から出社します」
「そうですか。では、よろしくお願いします」
ところが、その月曜日になってまた連絡が。
「コロナに罹ってしまったので、休みます」
「そうですか…分かりました。お大事にしてください」
さらに数日が経過し、再び連絡が来た。
「コロナも落ち着いたので、出勤したいのですが、何時からがいいですか?」
「田口さん、何時でも構いませんが、出勤できる前日に必ず連絡してください」
しかし、それ以降この人からの連絡は一切なかった。このやり取りだけで、すでに2か月ほどの時間が経過している。
このようなケースは、意外と“あるある”なのかもしれない。だが、ふと疑問に思う。収入がない状態で、どうやって生活しているのだろうか?家族の支援でもあるのだろうか。事情は分からないが、社会との接点が希薄になっていく様子に、他人の事だが少し同情を覚える。
・アルコール依存症のような人
ドライバーを募集した際のこと。面接に現れたのは、やたらと声の大きい男性今井(仮名)だった。話し方が、昔テレビで見た「たこ八郎」にそっくりで、最初はアルコール依存症かと思った。しかし、酒臭さはなく、本人も「酒は飲みません」とはっきり言っていた。
彼は建築関係の資格を9つほど持っており、どれも業界では必要とされるもののようだった。ただ、私の印象としては不採用だった。どう見てもまともに会話が成立せず、意思疎通が非常に困難な人物だった。決して馬鹿にしているわけではないが、私の採用基準は明確だ。
「この人と一緒に仕事をしたいか?」
この問いに対して、私の答えははっきりと「NO」だった。
すぐに不採用を告げるのも気の毒なので、「社内で検討してから返事をします」と伝えて帰ってもらった。
当時、ドライバーの人員は逼迫しており、すぐにでも補充が必要な状況だった。というのも、ただでさえ少ない人数で業務を回している中、一人が退職することになっていた。その期限はあと2週間と迫っていた。
そんな中、ドライバー長の森(仮名)さんが声をかけてきた。
「試しに1日だけ使ってみたらどうですか?」
「明日、一日だけ試験的に走らせましょうか…」
そう言って、本人に連絡を取り、特売日の配達で最も忙しいトラックに乗せることにした。果たして、彼はその業務をこなせるのか。現場での対応力や協調性が試される一日となるだろう。



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