≪堺のおばちゃん≫

お笑い

(出囃子が鳴り、二人がステージに登場。拍手の中、マイクの前へ)
強: どうもー、中山家です。お願いします。
誠二: お願いしますー。いや、ありがたいですね。
強: まあ、大阪言うてもいろいろありますけど、最近気になってんのが「堺」なんですよ。
誠二: 堺な!ええとこですよ。千利休とか、刃物とか。
強: いや、そういう伝統文化やなくて。堺のおばちゃんよ。あそこのおばちゃん、大阪市内のおばちゃんとはまた違う「圧」があるやろ。
誠二: 分かるわ。なんやろな、あの独特の「南大阪のプライド」というか。天王寺あたりのおばちゃんはまだ「ヒョウ柄」で分かりやすいねんけど、堺はもうちょっと……「鋼(はがね)」に近いな。
強: 鋼(笑)。ちょっとやってみてよ、誠二さんの得意なやつ。
誠二: ほな、堺の鳳(おおとり)あたりにあるスーパーのレジに並んでるおばちゃんやるわ。
(急に姿勢を低くし、首を少し前に出し、架空のカゴを腕にかけて、周囲を威嚇するような目で見る)(独り言で)……遅いな。このレジの子、新人か。指先が「おぼつかん」わ。あ、またバーコード探してる。裏や、裏!商品の裏見いや!
強: 口が悪いな。
誠二:(店員に向かって、声は出さないが口パクで「裏!」と指を差す。そして自分の番が来ると、カゴをドサッと置く)
……あ、これな、あっちの棚に「2割引」って書いてあったで。貼るの忘れてるんちゃう? ちゃんと見といでや、お姉ちゃん。……え? 今から確認? 待ってる間に日が暮れるわ。ええわ、もう、そのままでええわ! 引いといてや、後で!
強: 無茶苦茶言うな。
誠二:(会計中、財布から小銭を出す動作。指をなめて小銭を数える)
「一、二……あ、これ一円か。五円かと思ったわ。最近の硬貨は紛らわしいねん。……これ、一円玉、もうちょっと大きくできへんのかねえ?」
強: 造幣局に言うてくれ。
誠二:(急に横の客に話しかける)「な、お姉さんもそう思うやろ? 堺市も合併して大きくなったんやから、小銭も大きくしたらええねんな」
強: どんな理屈やねん。
誠二:(レジ袋に詰める作業に移行。ものすごいスピードで、重いものを上に、柔らかいものを下に入れる)「あー、このキャベツ。外側の葉っぱ、ちょっと枯れてるやん。……ま、ええわ、これ抜いて持って帰ろ(バリバリと剥く音)。……はい、これゴミ箱(シュッ)。よし、完璧や」
強: 勝手に剥くなよ。
誠二:(自転車にまたがる動作。スカートの裾を大胆にまくり上げ、サドルにどっかと座る)
「……よいしょっと。あー、膝が鳴るわ。堺の道はガタガタやからな。南海電車も、もうちょっと駅の階段、エスカレーター増やしたらええねん。岸和田まで行ったらもっとひどいけどな!」
強: 堺のライバル心が出てるな。
誠二:(自転車で走り出す。ベルを鳴らし続ける「チリンチリンチリン!」)
「どきや! どきや! 堺のおばちゃんが通るで! ……あ、あそこの家の奥さん。また新しい車買わはったん。……ふーん。……あ、左曲がるで! チリンチリン!」
強: 信号守れよ。
誠二:(急ブレーキ)「キーーーッ! ……あ、田中さん! 田中さんやんか!」
強: 知り合いに会うたんか。
誠二:(自転車にまたがったまま、大声で話す)
「あんた、こないだの『だんじり』の時、旦那さんどこにおったん? 見かけへんかったやん。……え? 腰痛めた? 弱いわぁ、堺の男が腰痛めてどうすんの! 包丁でも研いどけ言うとき!」
強: 偏見がすごいな。
誠二:「でな、こないだ聞いたんやけど、あそこの角のパン屋さんな。あそこ、実は……(口を手で隠して、全然隠れてない声で)……店主が、不倫してるらしいで」
強: どこでそんなネタ仕入れてくるねん。
誠二:「……いや、うちの嫁が言うてたんやけどな。……え? 私、独身やった? いや、もう忘れたわ。とにかく、あそこのクロワッサンは『背徳の味』がする言うてな」
(家に帰ってきた動作。玄関を開けるなり)
「ただいまー! ……ちょっと、あんた! 昼間から何アニメ見てんの! 60過ぎた男が、リビングで酒飲みながらアニメて……。……え? これが癒やし? 癒やしは『ハニワ部長』見とけばええねん、堺市民なんやから!」
強: (笑)ハニワ部長て、堺市のキャラクターやな。
誠二:(ふと窓の外を見て)
「……あ、雨降ってきた。……洗濯物! ……いや、もうええわ、濡れたらまた明日洗えばええ。それが堺流や」
強: そんな流派ないわ。
誠二: 強さんも、今度堺行ったら、おばちゃんに「ハニワ部長に似てますね」って言うてみ。
強: どつかれるわ! もうええわ。
二人: どうも、ありがとうございましたー!
(二人が深々と一礼して、舞台を去る)

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