花粉症という言葉を耳にすると、多くの人が「春の地獄」を連想するようだが、私自身はそこまで深刻に悩まされているわけではない。もちろん、時にはくしゃみが連発し、鼻が詰まって一日中ぼんやりすることもある。二日ほど続くこともあるが、それが毎年恒例の苦しみというほどではない。むしろ「花粉症で人生が台無しだ!」と嘆いている人は、私の周囲にはあまり見かけない。これは私の主観だが、職場が田舎にあることが大きな要因なのかもしれない。
田舎というのは不思議なもので、花粉が舞っても地面に吸収されやすい。土が花粉を飲み込んでしまうから、空気中に漂う量は少ないのだ。ところが都会は違う。アスファルトやコンクリートで舗装された地面は花粉を吸収してくれないので、残った花粉が空気中を漂い続ける。都会の人が「花粉症で死にそうだ」と騒ぐのも、ある意味当然なのだろう。実際、花粉に神経質な人は結構いるようで、春先になるとマスクや目薬を常備している姿をよく見かける。
さて、そんな花粉の話から一転して、私は先日電機の量販店に暖房器具を探しに出かけた。冬の寒さは花粉以上に人を苦しめる。店内にはさまざまな暖房器具が並んでいたが、私が目をつけたのは「石油ファンヒーター」だ。理由は単純で、電気代があまりかからず、灯油を使うことでコストパフォーマンスが良いからだ。財布に優しい暖房器具、それが石油ファンヒーターである。
実はこの暖房器具を買う目的は、自分のためではない。会社の寮に住んでいる技能実習生に、何か温かいものを提供してあげなければならないからだ。特に女の子の実習生は寒さに耐えるのが気の毒だということで、社長から「女性の味方として暖房器具を買ってやれ!」と勅命が下った。男の実習生に対しては「布団でもかぶって寝ればいいだろ」と冷たい態度。私も「まあ確かに」と思わなくもないが、さすがにそれでは薄情すぎる。日本の冬は意外と厳しいのだ。
店内を歩いていると、暖房器具の隣に空気清浄機がずらりと並んでいた。値段を見て驚いた。高価なものになると十万円近くもする。そこまでして花粉や埃を取り除きたい人がいるのかと、しみじみ感じながら眺めていた。人間の健康への執念はすごい。
ここで思い出した雑学がある。第二次世界大戦の頃、日本では花粉症の人は兵隊になれなかったという話だ。私は花粉症というのはここ二、三十年で急に増えた現代病だと思っていたが、どうやら昔から存在していたらしい。「花粉症にかかるような軟弱者は兵役に向いていない」という理屈だったのだろう。確かに兵役に就けば、ジャングルでの野戦もあり得る。敵に気づかれないように息を潜めているときに、突然「へーっくしょん!」と大きなくしゃみをしてしまったらどうなるか。命に関わるのは言うまでもない。兵役が務まらないのは、そういう理由なのだ。
インフルエンザやコロナのような感染症なら、ある程度は自己防衛が可能だ。手洗い、うがい、マスク、ワクチンなど、予防策はいくらでもある。しかし花粉症は違う。花粉が飛ぶ季節になれば、どんなに注意しても完全に防ぐことは難しい。だからこそ厄介で、昔から人々を悩ませてきたのだろう。
結局のところ、花粉症は「現代人の宿命」などと大げさに言われるが、実は昔から人類と共にあった厄介な相棒なのだ。都会では空気清浄機が十万円で売られ、田舎では「花粉なんて土に吸われるから大丈夫」と笑い飛ばす。人間の暮らし方次第で、花粉症の感じ方も大きく変わるのだと改めて思う。



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